独映画祭で双葉町長訴え「二度と私たちのような経験をしてほしくない」
開催中の第62回ベルリン国際映画祭で12日(日本時間13日)、東京電力福島第1原発事故で県外避難を余儀なくされた福島県双葉町民を記録した船橋淳監督のドキュメンタリー映画「ニュークリア・ネイション(仮)」が上映された。終了後、井戸川克隆町長がビデオ出演し「もう二度と私たちのような経験を世界中の皆さんにしてほしくない」と訴えると、会場から盛んな拍手が送られた。
映画は、埼玉県の旧校舎で避難生活を続ける町民や人の消えた町の様子を記録。公務で映画祭に参加できなかった井戸川町長は、ビデオで「原発を誘致して町の振興に役立てたいと思っていたが、事故で考えは大きく変わった。放射性廃棄物の最終処分場が確立されない中、世界中に原発が多くできるのは大変危険だ」と呼び掛けた。
会場には、劇中のピアノ曲「for Futaba(双葉のために)」を作った音楽家坂本龍一さんも登壇。「(映画を見て)双葉の人たちに感情移入して何度か泣いた。日本の原子力政策を変えたい」と述べた。今夏、福島をテーマにした音楽アルバムを作り、著名ミュージシャンに呼び掛けて音楽イベントを開きたいとしている。
広島の被爆2世でもある船橋監督は「双葉町の人たちの現状を世界の多くの人に見てほしい。彼らが定住できるようになるまで記録を続けたい」と話している。(共同)
ベルリン国際映画祭で福島県双葉町のドキュメンタリー映画を上映後、観客の質問に答える船橋淳監督(右)と坂本龍一さん=12日(共同)