1927 105 min
Ivor Novello as Roddy Berwick
Isabel Jeans as Julia Fotheringale
Hitchcock 9 東京プレミア2日目。
朝から眠気に勝てなかったのですべてははっきりと覚えていないが、ヒッチコック・サイレント初期にあって、台本をそのまま引きで撮っているという感がいなめない。いくつか、主観ショットをベースにしたサスペンス演出が、ヒッチコックらしいといえばそうだが。
悪女が次から次へと登場し、主人公(美男子)はダマされ続けるというプロットはヒッチコックらしい。まるく太った女性が何人もでてくるというのは、時代性というより、明らかにヒッチコックの好みなんだろう。美男子を老女相手にジゴロさせるマダムとか、あの大仰ななりの人物が次々にでてくるあたりはおもしろい。
「人生の下り坂」とかけて、エスカレーターの下りを見えるという「ナイーブ」(後にヒッチコック曰く)なショットなど、エレベーターの「DOWN」ボタンを押したりと、とにかく「下り」にこだわりまくったビジュアル。
途中フィルムの色が変わる。アンバートーンから、緑っぽいトーンへ。
それは、「悪夢」としてディゾルブを使うより、色のトーンを変えて、いつの間にか悪夢の中にいるという演出だったそう。フィルムをヒッチコックが染色したそうだ。
主人公のRoddy(Ivor Novello)が、悪女にダマされ続ける中で、だんだんと悲壮感が漂ってくるあたりは素晴らしい。
全体的に舞台のようなスタジオでの立ち芝居が続くだけなので、それが厳しかった。初期は演出がまだまだなのかもしれない。次から次へ畳み掛けるというよりは、まったりとしている会話劇が長いと感じてしまう。
ただ引きのショットで見せきるセンスはすばらしい、それは後にさらに磨きがかかってくる感性だ。