「息の跡」小森はるか

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映画の画面、ワンショットごとに血を通わせること。
それが巨大震災に映画作家が向き合う唯一の方法であることを、小森はるかは誰に教わることもなく知っていた。荒れ果て、人気(ひとけ)もなくなった荒野が、一人のたね屋のつぶやきで、まるで違った風景に見えてくる。
彼女は、ひとりたね屋の定点観測を続ける。たね屋は、悲しみが深まることを避けるため、母国語でなく英語、中国語、スペイン語でつぶやきを続けてゆく。すると信じ難いことに、言語によらずともはみ出してくる、情感だけがこちらに浄化され伝染してくるのだ。たね屋の魅力を見いだし、キャメラとともに根気強く付き合い続けた彼女の胆力にひたすら感動した。
映画と震災の美しく、正しい接点に触れた気分である。

Atsushi Funahashi 映画作家。「過去負う者」「ある職場」(東京国際映画祭2020)「ポルトの恋人たち 時の記憶」(主演柄本佑, ロンドンインディペンデント映画祭最優秀外国映画)「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(主演オダギリジョー)「echoes」を監督。著書に「まだ見ぬ映画言語に向けて」(吉田喜重との共著)A Tokyo-based filmmaker. Directed “COMPANY RETREAT”(Tokyo IFF), "LOVERS ON BORDERS"(Best Foreign Future LONDON INDEPENDENT FF 2018), "NUCLEAR NATION I&II", "Big River"(all premiered at Berlinale), "echoes". His book include “Undiscovered Film Language” (Co-written with Kiju Yoshida).

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