【慰安婦問題日韓合意について私見まとめ】

ネット上でいろいろ賛否が錯綜していますが、僕の意見をまとめてみます。
●まずは、「日本政府が軍の関与や政府の責任を認め」たことは、素晴らしい。素直に評価すべき。
●安倍政権の姿勢からは、まったく予想だにつかなかった急展開。
 背後にアメリカからのプレッシャーを見るもの、来年夏の参院選への布石と読むもの、さまざまな憶測が飛んでいる。確かに「騙されないぞ」という懐疑的姿勢は必要だし、「軍の強制性はなかった」という重箱の隅の議論に終始し、歴史を直視しようとしてこなかったこれまでの言動から180度転換は、何かしら打算があると読むのが妥当かもしれない。
●その証拠に、10億円規模の日本政府からの拠出は、ソウル日本大使館前の少女像移転が交換条件だという。へ、なんで?という感じ。
 責任を認めているなら、被害者への哀悼とお詫びの象徴としての少女像を受け入れるというのが素直な解釈であるが、ここが安倍政権の二枚舌。
 政権の保守派支持層への顔向けとして、頑として譲らなかったそうだが、結局は少女像は「日本への侮辱」として捉えているということの表明になる。
 
 つまり、一方で罪を認めながら、もう一方で罪を認めていないということ。
女性の人権を蹂躙したことを心から悔い、その罪の重みと向き合い、二度とそれが起きないよう後世へ遺してゆこうという、真っ当な贖罪姿勢より、打算含みの政治的妥結のように見える。
 
●もっとも注目すべきは、慰安婦だった被害者がまるで置いてきぼりのまま、「最終的かつ不可逆的解決」が決められたこと。
 当事者が遠く離れたところで、政治だけが上滑りしているのは、どこの国にも見られるが、特に安倍政権の“無視ぶり”は常軌を逸している。
 沖縄基地問題、原発事故、震災復興、再稼動問題・・・・一番下の市民と、政治の「判断」が遠くかけ離れ、かつ「最終的」結論と言われることの不条理が続いている。
●しかしそれでも、どんなに政権不信があろうとも、大きな視点で捉えれば、これは進歩とみるべき。事実として政府が公式に「慰安婦問題の責任は、日本政府と軍にある」と認めたことは歴史的進展であり、この合意を負の歴史の直視のための次なる一歩に利用すべきだと思う。
 
http://www.asahi.com/articles/ASHDX51J5HDXUHBI00X.html
http://www.asahi.com/articles/ASHDX5HX3HDXUTFK00Y.html

Atsushi Funahashi 映画作家。「過去負う者」「ある職場」(東京国際映画祭2020)「ポルトの恋人たち 時の記憶」(主演柄本佑, ロンドンインディペンデント映画祭最優秀外国映画)「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(主演オダギリジョー)「echoes」を監督。著書に「まだ見ぬ映画言語に向けて」(吉田喜重との共著)A Tokyo-based filmmaker. Directed “COMPANY RETREAT”(Tokyo IFF), "LOVERS ON BORDERS"(Best Foreign Future LONDON INDEPENDENT FF 2018), "NUCLEAR NATION I&II", "Big River"(all premiered at Berlinale), "echoes". His book include “Undiscovered Film Language” (Co-written with Kiju Yoshida).

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