「青空娘」 増村保造 @NFC

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1957 大映東京 88分
監督二作目にして、強烈な切れ味。
当時の格差など社会問題を背景に描きつつも、どう見ても日本に見えない色彩美と過剰な演出がただただおもしろい。どうみても狭すぎる部屋でジャズバンドが昼間からサックスを炸裂させていたり、洋館にすむ金持ち家族が庭でテニスではなく、卓球をしながらバヤリースのオレンジを飲み交わしていたり、辻褄は置いといて過剰になることに特化した細部が画面からはみ出てくる。
これだけの物語を88分におさめ、最初と同じロケーション(海際の岩場)で円環を閉じてしまう構築力は、さすが。この後の作品でさらにもっと盛りだくさんになるだろうことを予期させるに十分な、余裕ある構成力といえる。
初めて組んだ若尾文子に、少年が馬乗りになって取っ組み合いの決闘をするというシーンの過激さは、この後、さらにエスカレートした性表現へと発展してゆくことを予告していた。
会場で買えるNFCニューズレターにある万田邦敏の「やりすぎる増村」論考は刺激的で、本質を射抜いている。

Atsushi Funahashi 映画作家。「過去負う者」「ある職場」(東京国際映画祭2020)「ポルトの恋人たち 時の記憶」(主演柄本佑, ロンドンインディペンデント映画祭最優秀外国映画)「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(主演オダギリジョー)「echoes」を監督。著書に「まだ見ぬ映画言語に向けて」(吉田喜重との共著)A Tokyo-based filmmaker. Directed “COMPANY RETREAT”(Tokyo IFF), "LOVERS ON BORDERS"(Best Foreign Future LONDON INDEPENDENT FF 2018), "NUCLEAR NATION I&II", "Big River"(all premiered at Berlinale), "echoes". His book include “Undiscovered Film Language” (Co-written with Kiju Yoshida).

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