千秋楽を観劇。
夫と妻、その妻の元夫。そのうち二者がペアで登場し、欺瞞・虚栄・嫉妬という名のバトルを繰り広げる3場の極めてミニマムな心理劇は、そのストイックなまでの抽象性が見る者の想像力と欲望を掻き立てる。
21世紀とは、度重なるデカダンスの連続であり、それでも人は地獄の火種を追い求めつつ、生きてゆく時代であるーーというのが青山氏の時代観なのだろうか。女は自由奔放に、男はただただ愚かに振り回され続ける、がしかし、その女も男なしでは生きてゆけないし、男はその奔放な女の魔力に惹かれ続ける、というゲームの規則の再生産なのだろうか・・・と思いきや、とよた真帆、高橋洋、佐戸井けん太のたっぷりウィットとアドリブの効いた、生々しい心理の露出が、演劇空間の血肉としてスリリングなテンションを生み出している。
特に高橋洋さんは素晴らしく、嫉妬に煮えたぎり「い、い””~~」と悶絶を打つ瞬間はぞくぞくした。全力疾走で走り抜けいくところまで登り詰めた後、この男女の恋愛ゲームは誰か一人が勝ち抜けるのか、それとも皆が死に耐えるのか・・・誰も予想がつかぬ疾走感、高揚感はルノアール的とも言えるし、散らかし放題散らかしてこれもやっぱり人間だぁ、と人間讃歌にもなっている奔放さはフェリーニ的とも言える。
贅沢な大人の遊戯であることは間違いない。
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「私のなかの悪魔」
作 : ストリンドベリ
翻案 : 笹部博司
翻案・演出 : 青山真治
出演 : とよた真帆、佐戸井けん太、髙橋 洋 足立 理
HP: http://www.majorleague.co.jp/stage/strindberg/