「あなたの目になりたい」サッシャ・ギトリ "Donne-moi tes yeux" Sacha Guitry


1943    90 min
Geneviéve Guirty, Sacha Guitry, Mona Goya
ドイツ占領下のフランスで撮られたことを記憶せらるべき作品。
夜中、家路に急ぐギトリとその若い恋人(実際のギトリの妻)が、足下を懐中電灯で照らしながら、真っ暗の街路を歩くシーンは忘れがたい。若い女性を展覧会でみとめ、すぐさま声を掛け、彫刻のモデルとしてリクルートし、「芸術に関する対話」と言いながら男女が互いの距離を縮めてゆく辺りの演出は堂に入っているし、盲目の人間のための心理療法士の老婆との対話シーンは面白い。あのような発想はさすが劇作家ギトリだと思ったものだが、しかし、監督ギトリ自身が、若い恋人を思うばかりに、視力を失いつつある老齢の自身から、女の気を背けるように浮気するという展開は平凡であると言わなければならない。ルビッチであればさらにもう一ひねりがあったに違いない。実際、最も心を動かされたのは、途中、恋人達が訪れるキャバレーのステージを飾るシンガーMona Goya の歌声ではなかろうか。

Atsushi Funahashi 映画作家。「過去負う者」「ある職場」(東京国際映画祭2020)「ポルトの恋人たち 時の記憶」(主演柄本佑, ロンドンインディペンデント映画祭最優秀外国映画)「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(主演オダギリジョー)「echoes」を監督。著書に「まだ見ぬ映画言語に向けて」(吉田喜重との共著)A Tokyo-based filmmaker. Directed “COMPANY RETREAT”(Tokyo IFF), "LOVERS ON BORDERS"(Best Foreign Future LONDON INDEPENDENT FF 2018), "NUCLEAR NATION I&II", "Big River"(all premiered at Berlinale), "echoes". His book include “Undiscovered Film Language” (Co-written with Kiju Yoshida).

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